ニュースの概要
シンガポールの大型リゾートホテル、マリーナベイ・サンズで、自律搬送ロボットの活用が広がっていると、搬送ロボットメーカーのAGILOXが紹介した。対象は、搬入口から厨房や保管場所への物資の移動、客室清掃用品の補充、ごみの運び出しなど、宿泊客の目に触れにくいバックヤードの仕事である。同社はホテルを巨大な館内物流の拠点とみなし、今後はランドリーやハウスキーピングの搬送にも応用できると見ている。洗濯物やリネンを運ぶ現場にも、この波が及ぶ可能性がある。ただしメーカー自身の発信である点は、割り引いて読みたい。
引用元: マリーナベイ・サンズで自律搬送ロボットの活用が拡大、ランドリー物流にも応用余地(AGILOX)
分析・見解
大型ホテルの裏側は、小さな物流都市に近い
大型ホテルのバックヤードは、実は工場や空港に近い。毎日、食材、飲料、リネン、清掃用品、ごみが、決まった時間に決まった経路を行き来する。マリーナベイ・サンズは客室が2,500室を超える規模で、搬入口から厨房、倉庫、客室階までの距離も長い。ここを人の押す台車だけで回せば、仕事の大半は「運ぶ時間」になってしまう。ロボットは、その時間を肩代わりする道具として入りやすい。似た動きは病院にもある。食事、検体、リネンを自動搬送車で運ぶ例は以前からあり、ホテルはその応用先として後から続く形だ。
難しいのは走ることより、人と同じ廊下を使うこと
自律搬送ロボット(=地図を持ち、自分で経路を選んで荷物を運ぶ台車)は、倉庫では珍しくない。ホテルが難しいのは、宿泊客という予測しにくい相手と動線が交わる点にある。子どもが飛び出す。ワゴンが道をふさぐ。エレベーターは客が優先になる。工場の床は専用だが、ホテルの廊下は共用だ。だから導入の成否は、速度よりも「譲り方」で決まる。止まる、避ける、待つ。その振る舞いが自然かどうかが、評価の軸になる。
リネンは量が桁違いに多く、自動化の効果が出やすい
ホテルで最も重く、かさばるのはリネンである。シーツやタオルは、使用後に水気を含んで重くなり、客室階から回収され、洗われ、畳まれ、再び届けられる。一室あたりの量は小さくても、数千枚単位になれば、一日で数トンに達することもある。しかも毎日、ほぼ同じ時間帯に同じ区間を往復する。ロボットが得意とする条件が、そろっている。元記事がランドリー物流を将来の応用先に挙げるのも、うなずける。
本当の変化は、納品の時刻と場所が細かく指定されること
ここからは筆者の見立てである。ロボットが館内に入ると、ホテルは「午前中のどこかに届く」では満足しなくなる。ロボットは予定表どおりに動くからだ。納品は十分単位、受け渡しは決まった台車や籠、場所は決まった搬入口、という形に変わっていく。つまり、洗い上がりの品質だけでなく、届け方の精度が取引条件になる。外注先であるリネンサプライ会社にとって、これは静かだが大きな要求の変化だ。搬入口で待たされる時間が減れば、トラックの回転も上がる。精度を出せる会社には追い風になり、出せない会社には逆風になる。
ビジネスへの影響
まず自社の台車と籠が、ロボットに載る規格かを調べる
顧客のホテルにロボットが入る前に、自社の運搬資材を点検したい。台車の寸法がまちまち、車輪が傷んでいる、籠の積み方が日によって違う。この状態では、ロボットは荷物をうまく扱えない。資材をそろえる費用は小さくないので、いきなり買い替えず、主要顧客に「館内搬送の自動化計画はあるか」と尋ねるところから始めるのが現実的だ。計画があれば、受け渡しの形式も早めに聞き出せる。
納品の時刻精度を、価格とは別の売りにする
これからは、時刻どおりに届く会社が有利になる。過去の遅延回数や、到着時刻のずれの平均を記録し、提案書に一枚の表で載せたい。数字で示せれば、価格競争から離れる材料になる。逆に、記録がなければ精度は主張できない。まず配送車の到着時刻を、今日から残し始めてほしい。
小さく試し、人の置き換えでなく配置換えとして伝える
最初から全面導入はしない。搬入口から保管庫までの一区間だけ、一週間ほど試す。結果を見て広げれば、失敗の費用を抑えられる。社内には、運ぶ時間が減った分を検品や仕分けに回すと説明する。そうしないと現場が不安になり、定着しない。ロボットの購入やリース、保守の費用は規模で大きく変わる。必ず複数社から見積もりを取り、元記事の事例が自社の規模に当てはまるかを冷静に見極めてほしい。
